百年記念塔とは
蝦夷地と呼ばれていた北海道は、松浦武四郎がいくつかの名称案を出し1869年(明治2年)8月15日に太政官布告(だじょうかんふこく)によって北海道と定められました。
その後、開拓が本格的になって、北海道の開拓百年を記念して、1970年の9月に厚別区の野幌森林公園に高さ100mの百年記念塔が建てられました。
今日の北海道を築いてきた人びとの苦労に感謝し、未来への限りない発展を象徴するものとして、1970(昭和45)年に北海道百年記念事業の一環として建てられました。高さは100年にちなんで100mあり、8階(高さ23.5m)には札幌市街など石狩平野を一望できる展望室が設置されています。
上空に向かって無限大の高さで一点に交わる二次曲線は、未来への発展を象徴しています。また、平面的には六角形を形取っていて、これは雪の結晶を表現しています。
北海道博物館WEBサイトより
このデザインは全国からコンペ形式で公募を行い299案の中から選ばれた井口健さんが出した、精巧で美しい造形美のデザインです。
その百年記念塔は高さ100mもあり、札幌市内の少し高台にいけばその姿を確認することが出来、道民から今日まで親しまれてきました。
筆者も幼少期は厚別に住んでいましたので、幼稚園や小学校の遠足で、百年記念塔に歩いて行っていましたし、野幌原始林でよく遊んだものです。
建設から50年たちますが、塔の状態はとても健全です。
しかし、今、百年記念塔が解体されようとしています。
道は解体ありき
百年記念塔は腐食などの老朽化により、維持管理や安全面を理由に道は解体以外の道を考えずに話を進めているようです。
果たして、本当に老朽化しているのだろうか?
この百年記念塔の外装にはコルテン鋼(耐候性高張力鋼)という錆びが進むにつれて、錆止め効果を発揮するという、特殊な鋼板でできています。見た目には錆びていると表現されますが、酸化被膜で保護されていると言っても良いでしょう。
しかもこのコルテン鋼は富士製鐵の室蘭製鐵所で造られており、道産なのです。
道の解体判断は下記の通り
記念塔では過去に外壁の錆片や塔の躯体に後付けされたステンレス部材などの落下が起き、道は「老朽化によるもの」とする。そのため利用者の安全確保が必要になるが、試算では今後50年間で約30億円という高額な維持コストがかかるため、将来世代への負担軽減の観点から解体はやむを得ないと判断したとしている。
後付けあれた、ステンレス部材の落下とありますが、記念塔の未来を考える会の見解では、「ステンレス部材は途中で付けられたもので、ボルトのゆるみの締め付けなどの保守をすれば防げたものである。」
つまりは、腐食によって落ちたものではなく、点検していれば防げるものだということです。
さらには、維持管理には50年で約30億円が必要だとありますが、その根拠は疑問が残ります。(この疑問については後述します)仮にその費用がかかるものとしても、道は記念塔維持の財源を確保するための努力を怠っているのです。
例えば、ふるさと納税やクラウドファンディングを活用するなどして財源を確保するが考えられます。しかしそういった事を一切せずに解体ありきで話を進めているのです。
百年記念塔の建設の総工費は約5億円かかっているそうです。
そのうち道民の寄付金2億6,331万円、道補助金2億5,000万円(北海道環境生活部文化局による)です。半分以上は道民の寄付によって建設されているんですね。
では、なぜ道が勝手に解体を決めるのでしょうか。
解体ありきと修繕見積もり根拠に対する疑念
10年サイクルで維持管理調査が行われていましたが、その際に修繕の必要箇所などを見極めているものをなぜ50年後までの保守コストをなぜ見通すことが出来るのでしょうか。
あえて長期間のコストを無理やり算出して維持コストを高く見せる印象操作をしているようにしか思えません。単純に算出された金額を均等割りして10年で算出すると6億円です。
北海道百年記念塔ファンによるとH11の大規模改修工事で「膿を出しつくした」修繕で状態は安定しているというのです。
維持管理費を、故意に膨らませて費用が掛かってしまうからと見せて解体の方向へ向けているように思えます。
財界さっぽろの特集でこのようなものがありました。
検証・北海道百年記念塔はなぜ解体されるのか? | 財界さっぽろ
上記特集の案内には道が解体を決めたことに対し
しかし、この決定を下すプロセスの背景に「解体ありき」とも見受けられる疑念が複数存在している。
という内容がありました。
調査見積もりを行ったドーコンとの間に密約でもあったのでしょうか・・・
内部構造は非常にきれいな状態
外部構造の一部は、排水がよくない箇所などで、腐食が見られるカ所もあるようですが、保守点検を行えば維持ができる状態です。
上記写真を見る限り、躯体は非常に堅牢なもので、倒壊の危険など感じさせないものに見受けられます。つまり道が指摘する老朽化は限定的なものと言えるでしょう。
解体工事差し止め住民訴訟とクラウドファンディング
北海道百年記念塔を守る会は10月3日解体工事差し止めを求める訴えを起こしました。
訴状の内容:道には法令や条例に基づき記念塔を維持・管理する義務があったにもかかわらず、これを怠ったうえ、一方的に解体を決めた。
北海道百年記念塔を守る会では、この住民訴訟にかかる費用の支援を呼びかけています。
クラウドファンディング募集から1週間で、第一目標の3,000,000円を達成し、現在はネクストゴールの6,500,000円に向けて継続中です。
野幌森林公園エリアの活用(素案)パブリックコメント
道では、令和4年(2022年)11月11日(金) までパブリックコメントの募集しているようですので、私が感じる違和感を元に、一筆送らせて頂こうと考えています。
最後に
少しでも多くの方に知ってもらいたい思いと、10月7日の道議会で解体工事契約が承認されてしまった為、急いで書かせて頂いたので、根拠となる資料が抜けている・わかりづらいなどあるかと思います。解体差し止めに係る具体的なやり取り詳しい情報は、下記をご覧ください。
メディアから得る情報では、老朽化していて危険。だから解体はやむを得ない。そんな印象を受けてしまいますが、現実には、道が保守点検を怠たり、解体させる方向が既定路線だったことが伺えると言わざるを得ません。
北海道開拓記念館が北海道博物館に名前が変ったことも、記念塔解体の布石なのかとも勘ぐってしまいます。開拓の歴史を消したいのでは・・・
文化財という視点においての記念塔は、コルテン鋼の建造物としては世界最大級です。
重要文化財級の貴重な建造物です。
北海道開拓の歴史の象徴やランドマークという視点で考えてみても、簡単に解体を決めて良いものでしょうか。
現在では想像もつかないような荒野、原生林から開拓を行った先人たちの活躍、そして設計者の井口健さんの思いを考えると、後世に引き継いでいくべきものではないでしょうか。
先人たちの苦労があって、150年続いてきた北海道であり、私たちの暮らす環境の礎となっているのです。道民の気持ちを無視して、合意形成を図らずに一方的に解体を進めることは私は断固反対です。
RW
最新記事 by RW (全て見る)
- 延べ動員数200万人を超える さっぽろ雪まつり 第74回(2024) - 2024年2月10日
- WordPressサイトから記事一覧情報を取得しCSVで出力する方法 - 2023年4月18日
- 解体の危機百年記念塔!先人の北海道開拓の歴史を守れ! - 2022年10月30日
コメント